なるほど治療食

わかりやすい慢性腎不全の食事

慢性腎不全とは

(1)病態

慢性腎不全とは腎機能が 1/3以下になった状態を いいます。 図1は正常な腎の状態を 示し、図2は腎臓の組織 が萎縮し、働けるネフロンの数が減り、血液をろ過する働きが低下して老 廃物や水分を十分排泄できなくなった状態をしめしています。

(2)症状と身体所見

いったん慢性腎不全にな ってしまうと回復が望めないばかりか、どんどん進行して腎臓がほとんど機能しなくなっていくのが特徴です。 進行とともに多彩な症状と合併症が出現します。

(3)主な合併症について

  1. 心不全

    心臓のポンプ機能が障害され、全身の代謝に必要な血液を十分に送りだすことができなくなり ます。一方、全身を流れている血液が十分に心臓に戻れず、全身がむくみ、胸水や腹水がたま ります。ナトリウムや水の排泄障害、高血圧、貧血などが原因となっておこります。腎不全で 最も危険な合併症です。

  2. 貧血

    赤血球は、腎臓で産生されるエリスロポエチンというホルモンでつくられます。 腎不全になるとこのエリスロポエチンの産生ができなくなり貧血になります。

  3. 高血圧

    ナトリウムや水の貯留で体液量が増加し、また腎臓の血流量が減少することにより血圧を上昇 させるホルモンである、レニン・アンジオテンシン系が活性化されて高血圧を生 じます。

  4. 浮腫

    腎機能障害によりナトリウムや水が体内に貯留して浮腫を生じます。 さらに腎不全に合併しやすい心不全により、全身の毛細血管から血漿成分が漏出して浮腫を生 じます。

  5. 二次性副甲状腺機能亢進症と腎性骨症

    腎不全ではビタミンDの活性化障害により、腸からカルシウムが吸収できず低カルシウム血症 となります。この低カルシウム血症により、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌する二次性副甲状 腺機能亢進症がおこり、骨からカルシウムが溶け出して腎性骨症の原因になります。

(4)主な検査所見

《》の中は基準値
  1. 尿素窒素(BUN) 《8〜20r/dl》

    たんぱく質代謝の最終産物で、肝臓で作られます。腎臓が唯一の出口です。
    たんぱく質のとり過ぎやエネルギー不足があるとさらに上がります。

  2. クレアチニン(Cr) 《0.7〜1.0r/dl》

    筋肉から毎日一定量産生されます。
    腎臓でしか排泄できないので、腎機能が低下すると上がります。
    腎機能障害に程度を知るための指標として用いられます。

  3. 尿酸(UA) 《2.5〜7.0r/dl》

    プリン体の最終産物です。腎の排泄障害により上がります。

  4. カリウム(K) 《3.5〜5.0mEq/l》

    腎からの排泄障害と血液が酸性になることにより上がります。
    高カリウム血症で不整脈、心停止、心不全の原因になります。
    脱力感やしびれの原因にもなります。

  5. カルシウム(Ca) 《9.0〜11.0r/dl》

    腎不全ではカルシウムが低下しやすく、低カルシウム血症になります。
    二次性副甲状腺機能亢進症の原因となり腎性骨症の原因になります。

  6. リン(P) 《3.0〜4.5r/dl》

    腎からの排泄障害により腎不全では高リン血症になります。
    リンが高くなると腎障害が進行し、二次性副甲状腺機能亢進症をすすめます。

  7. ヘモグロビン(Hb) 《男13.0〜17.8g/dl 女11.0〜15.8g/dl》

    赤血球に含まれる赤い色素で、全身に酸素を運びます。
    この値が低いのが貧血です。

  8. ヘマトクリット(Ht) 《男40〜50% 女35〜45%》

    血液中の赤血球の割合を示したもので、貧血で低下します。




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