非常食コラム

第4回 災害時の食の役割

災害からの教訓

 阪神・淡路大震災から東日本大震災に至る被災地における食の問題には、共通な教訓があります。
 被災地では量的不足だけでなく、被災直後はお湯の無い避難所が多く、お湯を必要とする食品が届いても食べることができないという問題が指摘されました。
 さらに、阪神淡路大震災では、野菜と温かい料理の要望が多く出されました。新潟県中越地震の被災地でも、冷たさやおなじ食べ物の繰り返しが課題とされました。東日本大震災では、被災生活の長期化による栄養不足と偏り、アレルギー疾患のある被災者への食事提供が指摘されました。いずれも量的不足の問題だけでなく、質的問題が繰り返し指摘されています。これらの問題は何故繰り返されるのでしょうか。原因として、被災しないのではないかという危機感の欠如、被災生活対策の不足が考えられます。すなわち災害に対する油断が災害発生前の備えの不足を招いています。
 さらに、自治体などでは、消防、警察、災害対策本部などの要員が、救出、救援、被災者支援などの業務を継続して支える食の備えが必要となります。

 救護目的か生活や活動継続を目的とするかでは、備え方も食の質も異なります。目的に合った災害食を備えることが大切です。

事前の備えと事後の対応

 これまでの非常食として備蓄されている食品と発生後に救援物資として届けられる食品の多くは,地震発生直後の初期生活における短期的な使用が想定されています。 その1食あたりの量とエネルギーは、普段の生活の位置づけとは異なっています。東京都の備蓄ではクラッカーは88g、アルファ化米は100gが1食分として計算されています。又、これまでの災害における救援物資では、パンは1個、おにぎりは2個で1食として配られており、主食として炭水化物を成分とする食品が多く、栄養面への配慮がなされているとは思われません。
 被災地が、半径数十キロメートルと限定された範囲の場合は、全国からの支援も早期に集まります。しかし、東日本大震災の事例と同様に、今後想定されている首都直下地震、南海トラフ地震では、被災地域の広域化と被災者数の増大により外部支援が遅れ、被災生活は長期化することが予想されます。 このため、被災生活における減災には事前の備えが大切です。事前の備えがあれば、一定の時間的猶予があるため広域であっても量と質の問題にも対応が可能になります。

2013年8月23日




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